シングルマザーになって初めての年末調整・確定申告は誰でも戸惑うもの。
「ひとり親控除」「寡婦控除」「扶養控除」について、自分は当てはまるのか、どう書けば良いのかよくわからない人は多いです。
そこで、このページでは、シングルマザーの年末調整・確定申告について、「ひとり親控除」「寡婦控除」「扶養控除」の3つを中心に詳しく解説します。
ぜひ参考にして下さい。

このページに記載している控除額は、所得税のものです。住民税の控除額とは少し異なります
目次
年末調整・確定申告は所得税の清算と住民税の決定に必要な手続き
まず、年末調整・確定申告についてサラッとおさらいをしておきます。
年末調整・確定申告は、その年の所得税の清算と来年の住民税の決定に必要な手続きです。
その年の所得税は、年末調整・確定申告をもとに確定します。
毎月の給与から天引きの所得税の合計がその金額を上回れば、差額分を還付してもらうことができます。年末調整の場合、差額は12月の給与と一緒に振り込まれます。
住民税も、年末調整・確定申告に基づき決定。来年の6月からその金額での支払いが始まります。
例えば、年末調整の場合、所得税の清算と住民税の支払いの流れは、次のとおりです。
<年末調整の場合の所得税の清算・住民税の支払いの流れ>

年末調整は勤め先の会社が申告の手続きを代行、確定申告はあなたが自分で行う点で大きく異なります。
いずれにしても年末調整・確定申告は必要な手続き。しっかりと行いましょう。
年末調整と確定申告のどちらをすべき? 対象となる人をまとめてみた
では、あなたは年末調整と確定申告のどちらをすべきでしょうか。
ここで、それぞれの対象となる人をまとめてみました。
年末調整は会社勤めの人、確定申告はそれ以外の人と考えて、概ねOKです。

年の途中で別の会社に異動した人は、12月31日時点の勤め先で年末調整を行います。その際、前職の源泉徴収票が必要です
ただ、次に当てはまる人は、年末調整に加えて確定申告が必要です。
あなたが2カ所以上の給与収入や副業による収入を得ていて所得の合計が年20万円を超える場合、ふるさと納税・医療費控除を受けたい場合は、自分で確定申告を行う必要があります。

ふるさと納税のワンストップ特例制度とは、寄付先の自治体に手続きを代行してもらえる仕組みのこと。これを利用していれば、確定申告は不要です
ここで頭に留めておきたいのが、医療費控除です。母子家庭では、多くの場合、医療費控除は受けられません。
ひとり親家庭医療費を利用すれば、母子の年間の医療費が控除の対象となる10万円(総所得が200万円以下の場合はその5%にあたる金額)を超えることはありません。
母子家庭が医療費控除の対象となり得るのは、健康保険の適応とならない歯科矯正などの治療を受けた場合や親など子供以外の親族の治療・入院費を支払った場合。
年末調整に含まれない収入や控除がある人は、忘れずに確定申告も行いましょう。

年末調整は会社が負う義務。そのため、確定申告をするからといって年末調整の書類の提出を省くことはできません
収入によっては年末調整・確定申告をしなくて良い
収入によっては年末調整・確定申告をしなくて良い場合もあります。それは、次のような場合です。
上記に当てはまる人は、課税の対象となる所得がそもそもありません。
所得金額とは、年間で得た収入から経費を引いた金額のこと。
給与収入なら給与所得控除を引いた金額、事業収入なら経費を引いた金額が所得金額にあたります。
給与所得控除の金額は、収入によって変わります。
| 給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| ~1,900,000円 | 650,000円 |
| 1,900,001円~3,600,000円 | 収入金額 × 30% + 80,000円 |
| 3,600,001円 ~ 6,600,000円 | 収入金額 × 20% + 440,000円 |

給与所得控除は、会社員向けの「経費」です。個人事業主のように表立った経費がない代わりに給与所得控除を受けられるようになっています
基礎控除を除く控除には、扶養控除やひとり親控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄付金控除といった各種の控除があります。
所得金額の合計から基礎控除を除く控除を引いた金額が基礎控除額と同じかそれ以下の場合、課税の対象となる所得金額は0円以下となります。
所得税がそもそもかからないことから、年末調整・確定申告の必要はありません。

所得税は、所得金額の合計から基礎控除を含む各控除を引いた金額に対してかかります
基礎控除額も収入によって異なります。
合計所得⾦額132~489万円以下の場合、基礎控除額は次のとおりです。
| 合計所得⾦額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 58万円 |
| 336万円超489万円以下 | 58万円 |

基礎控除は、所得金額が2,500万円を超えない限り、全ての人が対象です
年末調整・確定申告をしなくても良いか判断に迷うなら、税務署または自治体の窓口に相談してみることをおすすめします。
年末調整・確定申告をしなくても、住民税の申告はしておこう
年末調整・確定申告をしなくて良い場合でも、住民税の申告は必要です。上述のとおり、年末調整・確定申告をもとに来年の住民税が決まります。
一般に住民税がかかるのは、所得金額が45万円を超える場合。
ただ、国民年金保険料や国民健康保険料の減免を希望する場合、住民税の申告の内容をもとに審査を受けることとなります。
そのため、住民税の申告は、収入によらず必ず行うようにして下さい。

住民税の申告は、お住まいの自治体の窓口で行います
シングルマザーにとって超重要! ひとり親控除・寡婦控除・扶養控除
ここからは、シングルマザーの年末調整・確定申告で欠かせない「ひとり親控除」「寡婦控除」「扶養控除」について解説していきます。
このうち、「ひとり親控除」「寡婦控除」はシングルマザーに特化したもの。
扶養控除は、一般的な家庭において夫が受ける場合が多いです。ただ、シングルマザーになった今なら、あなたが受けることができます。
それぞれについて詳しく解説していきます。

ここからは、令和8年の扶養控除申告書への記入を前提にお話しします
ひとり親控除
ひとり親控除は、子供を育てるシングルマザーなら必ず受けておきたい控除のひとつです。
ひとり親控除の所得税の控除額は35万円。
例えば、年収236万円の場合、所得税は17,500円、住民税は30,000円、合計で47,500円の節税になります。

年収236万円は、令和2年のシングルマザーの平均額です
ひとり親控除は、あなたがその年の12月31日時点で以下の要件を満たす場合に受けることができます。
ひとり親控除は婚姻の有無を問わず、シングルマザー全般が対象。未婚のシングルマザーも含みます。
「生計を同じくする子供」は、同居の子はもちろん、別居でも問題ありません。
進学で県外に住む子供に対して学費を払ったり仕送りをしたりしているなら、上の要件を満たします。

子供の要件にある「総所得金額」は、収入源がバイトだけなら、その合計の所得金額と考えてOKです
ひとり親控除を受けるには、申告書の該当のボックスにチェックを入れておきます。

ただ、あなたが養育費を受け取っている場合は注意が必要。元夫が「ひとり親控除」と後述の「扶養控除」を届け出る可能性があります。
ひとりの子供に対して控除を受けられるのは片方の親だけです。心配な人は元夫婦間で確認しておきましょう。
寡婦控除
寡婦控除は、離婚または死別、夫の生死が不明でシングルマザーになった人が受けられる控除です。未婚のシングルマザーは受けられません。
寡婦控除の所得税の控除額は27万円。
あなたがその年の12月31日時点で次の要件を満たす場合に受けることができます。
離婚によってシングルマザーになった人は、扶養親族がいることが条件。扶養親族は子供に限らず、親なども含みます。

扶養親族は、総所得金額が58万円以下であることが条件です
死別または夫の生死が不明な状態によりシングルマザーになった人は、事実婚と合計所得の制限があるのみ。扶養親族がいなくても控除を受けられます。
寡婦控除を受ける場合も、申告書の該当のボックスにチェックを入れるだけです。

ひとり親控除と扶養控除の併用はできません。ひとり親控除が優先となります。
子供が自立してひとり親控除の要件を満たさなくなった後、寡婦控除の要件を満たす場合に受けることができます。
扶養控除
扶養控除は、16歳以上の親族を扶養している場合に受けられる控除。
扶養控除の金額は、子供の年齢によって異なります。その年の12月31日時点の子供の年齢で申告します。
| 控除対象扶養親族の区分 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族(16歳~19歳未満・23歳~70歳未満) | 38万円 |
| 特定扶養親族(19~23歳未満) | 63万円 |
扶養控除は、子供との同居・別居を問わず受けられます。子供がバイトをしているなど、年間の合計所得が58万円以下であることが条件です。

あなたが個人事業主の場合、子供が青色・白色申告の事業専従者給与を受けていない必要もあります
子供の扶養控除を届け出るときは、下の赤枠の部分に該当の内容を記入します。

ここで気をつけたいのが、子供が19歳以上で23歳未満の場合。
この年齢の子供であれば、所得が58万円を超えても100万円以下なら扶養親族とすることができます。
子供が19歳以上23歳未満で所得が59万円以下の場合、次のように届け出ます。


赤枠の中を記入し、「特定扶養親族」にチェックを入れます
子供が19歳以上23歳未満で所得が59万円を超えて100万円以下の場合は、次のとおりです。


赤枠の中を記入の上、「特定親族」にチェックを入れます
また、あなたが親などを扶養している場合も、所得が58万円以下なら控除を受けることができます。
70歳以上の親と同居の場合は58万円、同居でない場合は48万円の控除を受けられます。
親が70歳未満のときは、上記の子供のときと同様に記入して届け出ます。
親が70歳以上で同居の場合は、次のように記入します。


赤枠の中を記入し、「同居老親等」にチェックを入れます
同居でない場合は、次のとおりです。


「その他」の方にチェックを入れます
親などを扶養しているなら、忘れずに届け出ましょう。
なお、「非居者である親族」とは、ザックリいえば、その年の12月31日までの1年以上、国内に住所を持たない人のこと。多くの場合、気にしなくて大丈夫です。
扶養控除の申告も確実に行うようにして下さい。
15歳以下の子供では扶養控除は受けられないが、住民税に影響する
上述のとおり、扶養控除の申告ができるのは、子供が16歳以上の場合のみ。
ただ、子供が15歳以下の場合でも申告はしておきましょう。
というのも、住民税の非課税の判定は、所得と扶養している人数で決まります。それには15歳以下の子供も含みます。
子供が15歳以下の場合、「住民税に関する事項」に記入します。

ここで、住民税に関する項目の「寡婦」「ひとり親」のボックスが気になった人もいるかもしれません。

ただ、こちらへの記入は、基本的には不要です。
このボックスにチェックをつけるのは、扶養親族が退職手当をもらっていて、その金額を合計所得金額の見込み額から引くと上記の「寡婦」「ひとり親」の要件を満たす場合のみです。
子供が15歳以下の場合も忘れずに申告しましょう。
扶養控除申告書の内容に変更があれば、すみやかに届け出よう
大抵、年末調整で会社から受け取るのは、来年分の扶養控除申告書。
来年の源泉徴収の金額を決めるため、会社は1月1日までにその年の扶養控除申告書を受け取ることになっています。
その場合、あなたが今年の年末調整で記入した扶養控除等申告書の内容で住民税の支払いが始まるのは、再来年の6月から。
来年の住民税は、前年の年末調整で提出した申告書の内容で決まります。
例えば、令和7年に提出した扶養控除等申告書が令和8年分のものなら、その内容は令和9年の住民税に反映。令和8年の住民税は、令和6年に提出の令和7年分に基づきます。

ちょっとややこしいですが、住民税の金額は前年の所得をもとに決まります
そこで、年末調整で気をつけたいのが、扶養控除等申告書を会社から受け取ったら、何年分のものか確認すること。
申告書には、その年の12月31日時点の状況を記入するようにして下さい。
扶養控除では、その年の子供の年齢は特に重要です。年齢によって受けられる控除額が変わります。気をつけてください。


所得は「見積額」。実際と変わってもOKです
また、前年に提出した今年分の扶養控除申告書の内容に変更があれば、すみやかに会社に相談して下さい。

例えば、子供の就職やバイト、あなたの再婚などで、各種の扶養控除の要件を満たさなくなる場合、申告書の修正が必要です
会社への報告は、変更があった日の後、最初の給与の支払いを受ける前日までに行います。
報告が遅くなれば、毎月の給与から天引きの源泉徴収の変更が間に合いません。
扶養控除申告書を記入するときは、まず何年の分かを確認すること、申告の内容に変更があればすみやかに会社に伝えるようにして下さい。
シングルマザーが受けられるその他の控除もまとめてみた

シングルマザーにとって外せない「ひとり親控除」「寡婦控除」「扶養控除」。その他にも受けられる控除は全て申告し、最大限に節税しましょう。
ここで、シングルマザーが受けられるその他の控除のうち主なものをまとめてみました。
これらのうち、小規模企業共済等掛金控除は聞き慣れないかもしれません。
小規模企業共済等掛金控除では、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済の掛金を支払っている場合に受けられます。控除額は支払った全額です。
社会保険料控除も、健康保険・厚生年金・雇用保険で支払った全額が控除となります。年末調整の場合、会社が記入してくれます。
ここで気をつけたいのが、あなたが年の途中まで国民健康保険や国民年金を支払っていた場合。この分については、自分で記入します。

子供の代わりに支払っていた分があれば、それも含められます
年末調整で申告できるのは、生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・社会保険料控除。届け出には、証明書類の添付が必要です。
控除の申告は漏れなく行い、税金による支出をしっかりガードしましょう。
年末調整・確定申告は5年以内なら修正できる!
十分に気をつけていても、ミスは誰にでも起こり得ます。年末調整・確定申告は、5年以内なら修正することができます。
まず、その年の年末調整・確定申告のミスに気付いた場合。
会社の年末調整の提出期限を過ぎていても、修正を受け付けてもらえる可能性があります。
会社が関係書類を税務署に提出するのは1月末まで。それまでなら、会社によっては修正してもらえる場合があります。
受け付けてもらえない場合は、自分で確定申告を行って修正しましょう。
確定申告は、2月16日~3月15日の間なら何度でも修正できます。最後に提出したものが正式な書類となります。
確定申告はスマホやパソコンから行うことが可能。初めてで不安なら、税務署や各自治体の申告会場に行って聞いてみましょう。

手続きにはマイナンバーカードなどの本人確認書類のほか、修正に関する書類が必要です。事前に確認しておくと安心です
過去のミスに気付いた場合は、修正したい年の1月1日から数えて5年以内なら修正できます。関連の書類を持って税務署に相談に行きましょう。
年末調整・確定申告の誤りに気付いても慌てず、すみやかに行動することが大切です。
まとめ
このページでは、シングルマザーが行うべき年末調整・確定申告について解説しました。
シングルマザーの年末調整・確定申告で忘れてはならないのが「ひとり親控除」「寡婦控除」「扶養控除」。
生命保険料控除をはじめとするその他の控除も漏れなく申告すれば、最大限に節税できます。
年末調整・確定申告はしっかり行い、無駄に税金を払うことがないよう気をつけましょう。